信仰生活の羅針盤(17)

峯野龍弘主管牧師

第9章 信仰生涯における勝利の秘訣

お互いキリスト者の人生における勝利への道は、どのような道なのでしょうか。その秘訣について学んでみましょう。

A. イエスが神の子であると言う確信に立つ

ヨハネは、彼の記した手紙の中で、次のように断言しています。「世に勝つ者とは誰か。イエスが神の子であると信じる者ではありませんか。」(Ⅰヨハネ5:5)と。実に、明解な解答です。彼は、このように確信してはばかりませんでした。その理由は、言うまでもなく「神の御子、主イエス・キリスト」に対する彼の信仰的確信によるものでした。では彼の信じていた確信とは、如何なる確信だったのでしょうか。

彼は、福音書記者の中で、誰よりも際立って明解に主イエス・キリストが「神の子」であることを特記しています。ヨハネは、彼の記した福音書の冒頭において、実にユニークな「神の子論」を打ち出しています。なぜなら彼は、主イエスの教えとそのご生涯の御業、そして御子イエスの誕生の秘儀、地上での全生涯の歩み、のみならず十字架と復活、そして昇天に至るまでの全行程を検証する中で、こう確信せざるを得なかったからです。そこで彼は、次のように神の御子イエスについて論じたのです。しかも主イエスについて「言(ロゴス)」と言う呼び名を用いて記しています。そこには、次のような真理が語られています。

ⅰ.「言」、すなわち「御子イエス」は、天地万物の創造者である「父なる神」ご自身と共におられた。そして、天地万物の創造者であり、万物を創造した全能者であり、先在者である神と「御子イエス」は、同等のお方であった(ヨハネ1:1~4a)。

ⅱ.「御子イエス」は、闇を照らす「命の光」であり、しかも、すべての人を照らす「まことの光」であった。それゆえ、如何なる闇をも寄せ付けない闇に対する「勝利者」である(1:4b, 9)。

ⅲ.「御子イエス」は、父なる神の「独り子」であって、神の栄光に満ち溢れ、恵みと真理に満ちたお方である(1:14)

そこでヨハネは、こう結論付けています。「いまだかつて、神を見た者はいない。父の懐にいる独り子である神、この方が神を示されたのである。」(1:18)と。

そうです。ここにこそ、ヨハネの揺らぐことのない確信がありました。このような大いなる御存在である「御子イエス」を信じ、このお方に依り頼み生きるなら、人生における如何なる困難・戦い・問題等が押し寄せて来ようとも、決して敗北することはないと言うのが、ヨハネの確信するところでした。だからヨハネは、大胆にも強い確信をもって、「光は闇の中で輝いている。闇は光に勝たなかった」(1:5)と記したのでした。のみならず。彼は同じ福音書の中で、次のような主イエスご自身の言葉を記しています。「あなたがたには世で苦難がある。しかし、勇気を出しなさい。私はすでに世に勝っている。」(同16:33b)と。

そうなのです。神のみ子なる主イエスは、あらゆる悪意・殺意をもってご自身に敵対する人々、特に律法学者やファリサイ派の人々、そして悪しき者たちに迎合する時の為政者と群衆の攻撃にも打ち勝ち、遂には十字架による苦難と死にも打ち勝ち、何よりもサタンとの戦いにも勝利され、お互い人間を罪の力から救い出し、天に戻られた「まことの勝利者」なのです。のみならず、遂には世の終わりには、再び来臨され、全世界を支配される「王の王、主の主」、「全能者」でおありになるのです。まさにヘンデルが作曲し、描き出した「メサイア」のクライマックスである「ハレルヤ・コーラス」で栄光と讃美を受けられるお方こそ、「まことの勝利者」にして「栄光の王座」に着かれる「神のみ子、主イエス」です。この勝利者を主と仰ぎ見る、お互いもこの勝利者「御子なる主イエス」によって、その勝利の座に侍(はべ)ることが出来るのです。

そこで、もう一度、主イエスの語られたお互いに対する激励の言葉に、深く心を留めましょう。

「あなたがたには世で苦難がある。しかし、勇気を出しなさい。私はすでに世に勝っている。」(同16:33b)。

ハレルヤ!(続く)

峯野龍弘(みねの・たつひろ)

1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。

この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。

主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。