キリストの愛に満たされた生涯(9)
第2章 キリストの愛によってどのように生きるのか(前回に続く)
Ⅱ. 淀橋教会の「ミッション・ステートメント」について
さて、淀橋教会の「ミッション・ステートメント」の根幹である「アガペー」について、十分理解して下さったと思いますが、そこでこれからその「ミッション・ステートメント」の一つ一つについて、コメントしてみることにいたしましょう。
A.「アガペー共同体」について
まず初めに「ミッション・ステートメント」の前文についてのコメントから始めましょう。その前文は、次のように記されています。「私たちの教会は、キリストの愛(アガペー)によって、愛(アガペー)されている者たちの群れであって、これを『アガペー共同体』と呼びます」と。
使徒パウロは、教会を「キリストの体」と呼びましたが、人間の体には様々な異なった部分があり、それぞれが固有の異なった機能を持つ部分部分が有機的に関連し一体となっているように、キリストを頭として全体が見事に一体化された体のようであることから、教会を「キリストの体」と呼びました。しかし、私たちはそれにも増して教会を、父なる神が、私たち罪人である人間を滅びの中から救い出すために、最愛の独り子イエス・キリストをお遣わしになられるほどまでに、私たちを愛され、また御子イエスは、その私たちを罪から贖(あがな)い出すために、十字架の上で尊い命をお与え下さったほどに、私たちを愛して下さった、この父なる神と御子イエスの大いなる愛、すなわち、「アガペーによってアガペーされたお互い」が、互いに「アガペーし合う」群れであることから、このキリストのアガペーによって一体化された存在を、私たちは「アガペー共同体」と呼ぶことにしたのです。そして、私たちは、教会の本質を、「アガペー共同体」として踏まえ直して捉えたのです。
B.アガペーをもって互いにアガペーし合い、仕え合う
そこで私たちの大切な営み、すなわちミッションは、先ず常に「互いにアガペーし合い、仕え合う」ことでなければなりません。自らを誇り、高ぶり他人が自らに仕えてくれることを喜んだり、期待したりする者であっては、断じてなりません。ましておや、他人を裁き、見下すようなことがあってはなりません。アガペーし、仕え合いましょう。
C.世に遣わされたキリストにある「アガペーのしもべ」
ですから私たちはこの世にあってすべての人々の「しもべ」であらなければなりません。主イエスご自身でさえ、「あなたがたの中で偉くなりたい者は、皆に仕える者となり、あなたがたの中で頭になりたい者は、皆の僕(しもべ)になりなさい。人の子が、仕えられるためではなく仕えるために、また、多くの人の身代金として自分の命を献げるために来たのと同じように。」(マタイ20:26~28)と言われましたように、私たちも主イエスに倣って喜んで、しもべの道を歩もうではありませんか。そして家族、友人、知人、すべての隣人、そしてさらに、社会に仕えて行こうではありませんか。
D.世界がキリスト愛の家族、アガペー家族となるために
かくして、この世界全体がやがてはキリストにあって、一つの大きな「アガペー共同体」となり、「神の家族」となることこそ、私たちの究極の願いであり、祈りなのです。それは、主イエスが、主の祈りを通して、「御国が来ますように、御心が天になるように、地にもなさせ給え」と教えて下さったように、地上の神の国化を目指すものです。そのためには、教会は、常に人種・言語・国籍・文化等の一切の隔ての中垣、つまりあらゆる違い性を越えて、一つでなければなりません。そのためには私たちお互いは、すべての人々に対してよく仕え、奉仕する者であるべきなのです。ちなみに、私たち淀橋の共同体には、国際部があり、目下、韓国語部、英語部、中国語部がありますが、更に新大久保地域には、日本一の多国籍の人々が寄留していることを思う時、私たちは、これらのすべての人々に仕える者となりたいものです。(続く)
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峯野龍弘(みねの・たつひろ)
1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。
この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。
主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。