自画像に悩む(1)
峯野龍弘牧師
自画像に悩む
序
ゴッホの有名な絵の一枚に、「自画像」と言うのがあります。筆者は中学生の頃、美術部に席を置いたことがありました。あの麦藁帽子をかぶり、パイプをくわえたゴッホの「自画像」なるものを見て、思わず笑ってしまいました。なんとも素朴な親しみやすい顔でした。
ところでゴッホは、果たしてあの自画像を見て、何と思ったことでしょう。少なからず後世にその絵が残されたのですから、ゴッホはその自画像を受容できたのでしょう。もし受容できなかったのとしたなら、彼はそのままその絵を塗りつぶしていたことでしょう。幼稚園の子が、自分の顔の絵を書いて、出来栄えが気に入らず、せっかく書いた絵の上にバッ点を付けた上、ついにはぐじゃぐじゃに塗りつぶしてしまうように。
しかし、ゴッホの絵ではありませんが、お互いは人生という名の大キャンバスの上に、各々が自画像を描いているようなものです。なかなか思うようには立派に描けず、いかにも立派に写実的に描き上げたかと思えば、その自分の顔が、喜べない愛せない。のみならずしきりと他人の顔と見比べては恥ずかしがり、他者を羨み、妬み、ついにはこんな自分に誰がしたと親を恨むようにさえなるのです。何と今日多くの世の人々が、この「自画像」に悩んでいることでしょう。
果たして如何にしたらこの「自画像」を愛せるようになるのでしょう。その秘訣は、いかに。次回以降をお楽しみに!
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峯野龍弘(みねの・たつひろ)
1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。
この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。
主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。