愛による全面受容と心の癒しへの道(112)

峯野龍弘牧師

第7章 「ウルトラ良い子」を健全に育てるための「アガペー育児法」

Ⅲ、第2期 3歳から6歳までの幼児期後半の幼児教育(前回からの続き)

C、高潔な品性、人格の基盤となる気質の育

では最後に今一つこの時期を逃さずに両親が我が子の育成のために励まなければならない重要事があります。それは高潔な品性と人格を養い育てるための基盤となる幾つかの気質の育成と言うことです。以下この点について言及してみましょう。

2 損や恥、自己の不利益を恐れない気質の育成

さて次に、「ウルトラ良い子」と呼ばれる子供たちは、元来自己の損得を気にせず、不利益を恐れない子供たちなのですが、だんだん成長するに従って、周囲の人々の影響を受け世俗的価値観に染まり始めます。そうすると折角のウルトラ良い子に付与されていた無欲で、献身的で、自己犠牲をも惜しまない純粋な感性が、目減りして行ってしまいます。それはまことに残念なことです。そこで両親はこの目減りして行くことのないように、この子たちを守ってあげる必要があるのです。ところが両親たちの方が世俗的価値観で染まり切ってしまっている場合は、このことに一向に気付かないばかりか、両親がむしろその良い感性、資質を奪ってしまうことになりかねません。のみならず我が子のかかる純粋感性に抑圧を課し、彼らを歪めてしまうことにもなりかねないのです。このようなことは断じて避けたいものです。ですから彼らの感性、資質の中にウルトラ良い子の特性があることに気付いたなら、大いに損得を計算せずに、自分の不利益をも顧みず、ひたすら善事に励み、人助けすることの大切さや献身的であることの尊さ、素晴らしさを高く評価し、更に失敗することを恐れたり恥じたりせず、堂々と善事に励むようエールを贈ってあげてほしいのです。自らが損をしてでも、また人々から馬鹿にされ辱められても、そしていかなる不利益を背負ってでも、善事に励み他者に貢献することは、実に高貴で美しい愛ある行為であることを心から賞賛してあげてほしいのです。ここでこの時期に、このような尊い感性と資質を存分引き出し、養い育てることに成功した両親は、単に自らの子育てに成功したばかりでなく、この世俗社会にかかる高貴な人材を送り出すことにより、より良い社会、より良い世界を築き上げて行くために大きな社会貢献を遂げたことにもなるのです。今日の世俗社会にはこのような高貴な人間の存在が決定的に必要とされているのです。

決してなってはいけないのです。ウルトラ良い子は両親の宝、わが家の誉れです。胸を張って、誇りを持ってかかる特性を持った我が子を、しっかりと養育しようではありませんか。

しかし、意外に多くのウルトラ良い子を持つ両親が、この点に気付かず失敗してしまっているケースが多いことは、甚だ残念でなりません。これまたよくよくご留意頂きたいものです。(続く)

峯野龍弘(みねの・たつひろ)

1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。

この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。

主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。