愛による全面受容と心の癒しへの道(109)
峯野龍弘牧師
第7章 「ウルトラ良い子」を健全に育てるための「アガペー育児法」
Ⅲ、第2期 3歳から6歳までの幼児期後半の幼児教育(前回からの続き)
B、自己抑制が出来、困難事に耐えることの出来る人間資質の育成
3 好き嫌いの感情をコントロールし、克服することを教えること
自己抑制ができ、困難事を耐え忍び、人生を力強く生き抜いて行くことの出来る人間資質の育成に役立つこの時期からの訓練で、極めて有効な日常的・実践的手立ての一つは、「好き嫌い」を極力させないようにすることです。およそ人間で「好き嫌い」のない人など、誰一人としていないでしょう。食べ物の好き嫌い、趣味や娯楽の好き嫌い、仕事の好き嫌い、その他さまざまな種類の好き嫌いがありますが、とりわけ人間に対する好き嫌いは、人間が社会生活を営んで行く場合に、様々なトラブルを引き起こすことがあります。
しかし、例えば食べ物における「好き嫌い」には、いわゆる我が儘で好き嫌いをしているというのではなく、生理学的・医学的見地からその人の生まれつきの固有の体質から、体自体がその食物を受け付けないという場合があります。また動物や植物、スポーツや職業などの好き好みも、これまた我が儘から発しているものではなく、個々人の生まれながらにして身に受けている固有の性質や特性から必然的に発した極めて大切な個性的選択による場合があるのです。ですからこうした類のものは、単なる「好き嫌い」と言う枠組みの中に取り組む必要は、全くないでしょう。
しかしながら、いわゆる「我が儘」と呼ばれる類の「好き嫌い」は、大いに克服されなければならない人生における大切な学課です。これを克服するか否かで、その人の人格,いや更には人生が左右されると言っても過言ではありません。
そもそも「我が儘」から出た「好き嫌い」と言うものは、直観的・感覚的な一つの「誤った感情」の表現であって、そこにはその「好き嫌い」の対象物に対して充分な考察も理解もないままで、即座に自分にとっての良し悪しを選択・決断してしまうことを意味しています。こうすることで自分にとっても相手にとっても有益なことを排除し、またその反対に自分にとっても相手にとっても不利益なことを取り込んでしまう結果を生み出します。その結果、人生に大きな損失を被ることになるのです。
そこでこのような人生に思いがけない大きな損失を自ら背負い込ませせないためには、この幼児期にしっかりと我が子が「好き嫌い」を克服できるように訓練することが大切なのです。しかもこの「好き嫌い」の克服の訓練の最も重要な点は、我が子をこの我が儘な「誤った感情」から救い出し、我が子にこの「悪い願望」から自ら脱出することのできるための、「誤った感情」や「悪い願望」に対する強い「自己抑制力」並びに「忍耐力」を育成してあげることができるからです。ですからこの好き嫌いの感情をコントロールし、克服することを教えるということは、人生にとって極めて大切な自己抑制及び困難事に耐えることの出来る人間資質を育成するのに、決して欠かすことの出来ない、見過ごしてはならない大切な育児の知恵と言うことができます。
かくしてこれらの諸点においても、大いに失敗しないように心がけたいものです。(続く)
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峯野龍弘(みねの・たつひろ)
1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。
この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。
主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。