愛による全面受容と心の癒しへの道(103)
峯野龍弘牧師
第7章 「ウルトラ良い子」を健全に育てるための「アガペー育児法」
Ⅲ、第2期 3歳から6歳までの幼児期後半の幼児教育(前回からの続き)
A.人間関係における調和の精神と感性の育成
2 如何にして愛することの大切さを教えたらよいのか。
ⅰ.先ず何よりも第一に大切なことは、「両親が愛し合っていること」です。つまり子供にとって、両親が愛し合いながら日々生活していることを見ることに優る愛の大切さの学習は、他にないのです。両親は子供にとっての愛の大切さを教える教師である以上に、自らがそのモデルであり、模範であり、お手本でなければなりません。子供はその両親が愛し合って生きているその姿を見て、愛し合うことの素晴らしさ、大切さを学習していくのです。ですから夫婦円満でいつも愛し合っている両親の間で育つ子供は幸いです。
しかし、今日は何と悲しい不幸な時代でしょう。子供たちが夫婦愛し合っている両親を見出すことが、極めて困難になってしまっているからです。両親がいてもその夫婦仲が悪かったり、父親が単身赴任していてほとんど両親が一緒にいる姿を見ることが出来なかったり、最も悲しむべきことは愛し合うことによって「愛の大切さ」を教えるべき立場におかれている両親が、離婚してしまっていたりするからです。
先般ある会合で出会ったご夫婦が、「自分たちは最初の子供が生まれた時以来、今日に至るまで子供のいるところでは決して喧嘩をしない事にしてきたのです。そのおかげでお互いは喧嘩せずに済みました。子供は夫婦円満の守り神ですね・・・」と。何と幸いなことでしょう。このような両親の許で、子供たちは「愛し合うこと大切さ」を学び、また生まれて来る子供に対してこのような責任感をもって謙虚で真摯に子育てに当たる両親にとっては、子供こそが夫婦の愛の絆となり、夫婦円満の保証者ともなるのであるということを、改めて教えられました。
ともあれ、夫婦仲良く愛し合っている両親の下で育つ子供は幸いです。彼らは「愛し合うことの大切さ」を、かくして学ぶことが出来るのですから。
ⅱ.第二は、言うまでもなく親が子供を深く愛することによってです。先にも「愛されたことのない子供は、愛することが難しい。しかし、愛されて育った子供は、概して愛する子供となる。」と記しましたが、例外はあるにしても、多くの場合この言葉は真実です。愛されて育った子供の心は穏やかで、彼らは愛されることの喜びと幸いを十分満喫しているので、自らもまた他者に対して愛することが出来るのです。 「豊かに愛の種を蒔いた子供という名の畑からは、愛という名の実り を豊かに刈り取ることができる。」この言葉もまた至言と言えましょう。(続く)
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峯野龍弘(みねの・たつひろ)
1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。
この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。
主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。