愛による全面受容と心の癒しへの道(94)

峯野龍弘牧師

第6章 アガペーによるフォローアップ ―神の嘉される8原則―

Ⅴ、では次にアガペーによるフォローアップの第五の原則に移ってみましょう。

第五番目は、「謙遜と真実をもって謝罪し、時としては深い悔い改めを表白して仕えよ」と言うことです。

お互いは、アガぺーをもって全面受容し続けようと心がけます。しかし、悲しいかな心ならずも失敗してしまうこともあります。その時、このことによって心傷つき病んでいたウルトラ良い子たちが、せっかくある程度まで癒され、健常さを取り戻しつつあったのに、この失敗によって再びプレッシャーを与えてしまったり、心傷つけてしまったりすることが起こり得るのです。これは彼らにとっては、折角信頼関係が生まれ、心に安息を取り戻しつつあったことを裏切られ、踏みにじられたかのような大きなショックを受けることになります。そればかりではなく受容者である親たちにとっても、そんなつもりでは全くなかっただけに、これまた大きなショックであり、地団駄を踏みたいほどの口惜しさと悲しみとを禁じ得ない出来事となってしまいます。

ではこのような場合には、果たしてどのように対処したらよいのでしょうか。このような場合いには、何よりも即座に相手に対して謙虚に、真摯な思いをもって心から深く謝罪することです。決して何か言い訳したり、自己弁護したりしてはなりません。そうすることはかえって火に油を注ぐような結果を招来します。なぜなら思いがけないお互いの失敗のゆえに、いままで受容されてきた彼らがやっとのことでここまで安息を取り戻して来たにもかかわらず、突然その信頼を裏切られて、またしても再びプレッシャーを受け、ショックを覚え、その心は動揺し、かつ不安を感じ、その瞬間その心に苛立ちをさえ覚えているのです。ですからこのような場合には、即座にこれらの動揺や不安、ショックと苛立ちを解消してあげなければならないのです。それなのにここで如何にそのつもりはなかったにしろ、何か言い訳をたり、正論をもって弁解してみても彼らの心は一向に安息しないばかりか、むしろ相手を傷つけておきながら、それをよそに自分の不利にならないために、しきりと自己弁護し身を守ろうとしているお互いに、苛立ちを感じさせてしまうのです。

ですからこの場に必要なことは、即座に謙虚な心で真実を込めて、先ず何よりも謝罪することなのです。事柄によっては時としては心からの深い悔い改めをさえ言い表して謝罪してあげることです。その極めて謙遜にして真摯な悔い改めと謝罪の言葉は、相手のために大きな癒し効果を齎します。このことは以前にも述べたことがありましたが、彼らは長い間自尊心を傷つけられてきたコンプレックスを強く抱いている人々です。その彼らがこの場面で相手であるお互い受容者から、このような謙虚にして真実のこもった悔い改めや謝罪の言葉を聞く、その瞬間自分たちがこの場面では相手より優位な立場、つまり許す側に身を置くことになるので、彼らの失っていた自尊心が回復し、コンプレックスを一瞬解消することが出来るのです。だからお互い受容者の失敗が、この謙遜にして真実な謝罪や悔い改めを通して、相手の益となり、彼らの癒しと回復のために役立つ結果となるのです。これこそまさに「失敗は成功の基」と言えましょう。

それゆえ決して徒に失敗を恐れる必要はありません。しかし、大切なのはその時の即座の「謙遜にして真実な謝罪と、時としては真摯な悔い改めの表白」です。ここで極めて大切なことを一言しておきましょう。それは心傷つき病んで来たウルトラ良い子には、悲しいかな一切の弁解は通じないと言うことです。親の方がどれほど辛い悲しい思いをしてでも受容し続けてきてあげたにもかかわらず、しかもその失敗が如何に不可抗力な事柄であっても、残念ながら一切の弁解は禁物なのです。何故でしょうか。それは言うまでもなく彼らはまだ病んでいて癒されていないからです。彼らにはなお引き続き“アガペーによる全面受容”が不不可欠なのです。ですからこのような場面では、まだ正論は通ぜず、なおアガペーすることによって、癒し続けることが不可欠なのです。そしてこのような場面でのアガペーの仕方こそ、「謙遜と真実をもって、時としては深い悔い改めを表白して仕えること」なのです。これぐらい効果のある関係修復と彼らの心の苛立ちと不安を解決する道は他にありません。ですからどうぞ時を逃さないようによくよくご注意なさり、これを実践してみて下さい!(続く)

峯野龍弘(みねの・たつひろ)

1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。

この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。

主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。