愛による全面受容と心の癒しへの道(60)

峯野龍弘牧師

第5章 心傷つき病む子供たちの癒しへの道

III. アガペーによる全面受容の癒しの道

2) アガペーによる全面受容の癒しが成されるための具体的な道

心病み傷ついたウルトラ良い子たちが、心の深みから癒されるために最良な道は、両親とりわけ母親のアガペーによる全面受容の道以外には断じてありえません。そもそも子供たちは、すべて母を思慕し、母に依存し、期待いたします。その母親たちが前述したように世俗の価値観から完全に脱却し、真の人間性の本質に立ち返り、人間の真の尊厳とその絶対的価値に目覚め、わが子を全面受容するようになるとき、そこに驚くばかりの癒しと回復が促進されるのです。そのためには心傷つき病んでいたウルトラ良い子たちが、果たして自らの母親がいかにアガペーの受容者にふさわしく変革されているかを確認できるような何らかの鮮やかな証しが必要とされます。その証しこそ、以下に述べるような新たなるアプローチとコミュニケーションとによって達成されるのです。

それではその達成への具体的実践の道をいかに順次記してみましょう。そして是非とも謙虚な思いをもって、真心こめて実行してみてください。

その時、必ずと言って良いほど日が経つほどにその喜ばしい成果に気づかされ、いよいよ確信をもってその道を究め尽して行かれることでしょう。

■癒しへの具体的な道

①子供への謙遜にして真摯な謝罪と告白 加害者告白(前回はここまで)

②子供の要求を無条件で全面的に受容することによる和解と真摯な受容の証明

前述の子供への謙遜にして真摯な謝罪と加害者告白が出来たならば、更に具体的な次のステップに進むことが出来ます。

そこで次のステップは何でしょうか。それは子供の要求を全面的に、かつ無条件で受け入れるということです。これは非常に大事なステップで、これによって両者の間に長い間大きなわだかまりとなり、しこりとなり、断絶と対立関係を生み出し続けてきた不和の感情と関係が、一気に緩和され、和解が生まれます。そこには長い間待望してきたあたかも“春の雪解け”のような和らいだ感情と関係が生み出されるのです。これはまさに和解のバロメーターでもあり、両者の間に和解の夜明けが遂に到来したことを告げる明けの明星の如きものです。のみならずこのアガぺーによる“無条件的全面受容”は、前述した謙遜で真摯な謝罪と告白が、いかに真実なものであったかを相手に納得させることの出来る最良の受容証明でもあるのです。ここでよくよく留意しなければならない、確実に“和解につながる全面受容”の重要なポイントは、以下の諸点です。

ⅰ.その第一は、何よりも“無条件的”であることです。

よく子供の要求を受け入れようとする時、母親がしばしばそういう場面でその子に対して交換条件を出す人がいます。この交換条件付き受容ということは、心傷つき病んでしまってはいない健常な子供たちに対しては、その子になんでも要求したことはいつでもその通りしてもらえるものだと勘違いさせてしまったり、本人自身は何の努力も労苦もしないまま極めて安易に人に物事を要求する人間にしてしまったり、いわゆる子供を甘やかさないために大いに有効な教育手段となります。むしろそれが彼らの良き励みとなり、かつ努力を促進させる極めて効果的な精神鍛錬の道となります。しかし、すでに心傷つき病んでしまっているウルトラ良い子たちにとっては、残念ながら効果がないばかりか、かえって有害であり逆効果になってしまうのです。これは彼らにとっては更なる重荷となり、プレッシャーとなります。彼らの傷つき病める心理からすれば、ただひたすら今は全面受容されたいのです。甘えてはならないのではなく、むしろ今こそ無条件で甘えたいのです。

そして長い間抑圧され、苦悩し続けてきた自らの心を癒したいのです。彼らにとっては条件付きの受容ではアガペーを感じ取れないのです。ここですでにくどいほど学んできたアガぺーの定義を思い起こしてください。アガぺーとは、「何一つ見返りを期待しない」一方向の無条件的愛なのです。残念ながらこの長い間心傷つき病んできたウルトラ良い子たちの極限的に追い込まれてしまい、出口が分からなくなってしまっている異常心理を深く理解し、アガペーをもって無条件的全面受容してくれる人々は、ほとんどいないのです。これは決して甘やかしでも、過保護でもないのです。心傷つき病み、かつ異常心理に追い込まれてしまっている哀れなこの子たちを癒し、救う最良の近道がここにあるのです。今ここを読まれている“心傷つき病んでいるウルトラ良い子”を持つご両親たちよ、いや特にお母様たちよ、この彼らの心理をよくよく悟って、愚か者にでもなったつもりで、この世の世俗的価値観に支配されている人々の嘲りや非難を覚悟して、あなたの病めるお子様を無条件的なアガペーの全面受容の愛をもって受容してやってはいただけないでしょうか!その時あなたと子供さんの間には、和らぎと和解が生み出され、きっと癒しが急速に促進されることでしょう!(続く)

峯野龍弘(みねの・たつひろ)

1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。

この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。

主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。