安らかに心豊かな人生を過ごすための道しるべ「主と共に、主イエスに倣って」(9)
峯野龍弘牧師
第4章 主と共に歩む生涯をどのように築き上げて行くべきか
Ⅰ. 神の聖言に堅く根差した生活
先ずそこで初めに注目したいことは、主イエスは、ご自身が「神」であり、「全能者」であられながら、決して自己主張をなさらず、絶えず父なる神の御旨を確かめ、神の御心に従って歩まれたと言う点です。ですからお互いも常に、生涯の最後の一息に至るまで、神の御子であられた主イエスに倣って、御父の御心に従って歩んで行きたいものです。このことは換言すれば、常に「神の聖言の上に堅く立つ」と言うことでもあるわけです。この点について雄弁に物語っている格好の主イエスの模範が、主イエスの公生涯の最初の場面で出てきます。それは主イエスがバプテスマのヨハネから洗礼を受けられ、公生涯に進まれたその直後のことでした。
その時、悪魔が主イエスの許にやって来て三度、主イエスを巧妙に誘惑したのです。
それは主イエスが40日間の断食を終えられ、激しく空腹を覚えておられる時でした。そこで悪魔は立て続けに次の三つの誘惑を仕掛けてきました。
第一は、主イエスが真の神の子なら、「石がパンになるように命じたらどうか」(マタイ4:3)と言う誘惑でした。
第二は、主イエスが神の子なら、神殿の屋根から「飛び降りたらどうだ」、そうしたら「天使たちは手であなたを支える」(同4:6)だろうと言う誘惑でした。
そして第三は、悪魔は主イエスを非常に高い山に連れて行き、世のすべての国々とその栄華を見せて、「もし、ひれ伏してわたしを拝むなら、これをみんな与えよう」(同8~9)と言う誘惑でした。
しかし、主イエスはこれらのすべての誘惑に対して申命記に記されている神の聖言を引用し、見事に撃退なさいました。すなわち第一の誘惑に対しては、申命記8:3(マタイ4:4)の「人はパンだけで生きるのではなく、人は主の口から出るすべての言葉によって生きる」を引用され、この神の御心に従って悪魔を退けました。続いて第二の誘惑に対しても、申命記6:16(マタイ4:7)の「あなたたちの神、主を試してはならない」の聖言を即座に引用して、誘惑者を撃退しました。そして更に第三の誘惑に対しても申命記6:13(マタイ4:10)を引用して、「あなたの神、主を畏れ、主にのみ仕えなさい」と言って間髪を入れず、見事に悪魔の誘惑を退けました。しかも、この最後には極めて厳しく悪魔を名指して、「退け、サタン。あなたの神である主を拝み、ただ主に仕えよ」と厳命しました。
ここでこの一連の記述の中でよくよく注意深く、心に留めて頂きたい言葉が記されているのにお気づき頂きたいと思います。それは主イエスがこれらの申命記の聖言を引用しながら、その都度「~と書いてある」(4:4b、6b、10b)と強調しておられることです。これは主イエスご自身がいかにご自分の意思や願望によらず、絶えず父なる神の御心に従って歩もうとされていたばかりか、聖書に記されている神の言葉に堅く根差そうとしておられたことを雄弁に物語っています。
このことはお互い神の子とされたキリスト者が、如何に主イエスの如く、常に神の御心に従って歩み、その聖言に堅く根差して生きて行かなければならないかを、強く教え示しているのです。ですからお互いも日々、主イエスのこの模範に倣って、主の御心に従い、聖言に堅く根差してあらゆる誘惑にも打ち勝ち、また試練や困難にも屈することなく、「主と共に、主イエスに倣って」進んで行きたいものです。(続く)
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峯野龍弘(みねの・たつひろ)
1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。
この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。
主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。