愛による全面受容と心の癒しへの道(99)
峯野龍弘牧師
第7章 「ウルトラ良い子」を健全に育てるための「アガペー育児法」
Ⅱ、第1期 0歳から満3歳までの育児教育
さて、いよいよ子供が誕生してからの育児法について述べてみましょう。
①では、これはいつから始めたらよいのでしょうか。それはもの心がつき始め、意思的行為が芽生え始めた頃より始めて下さい。この時を逃してはなりません。もう少し大きくなってからと考えがちですが、その必要はありません。いやそれでは大切な時を逃してしまうことにもなり兼ねません。この時直(ただ)ちに始めて下さい。そして満三歳を目安に、それまではしっかりとこれを積み上げて下さい。なぜならば、この頃までに子供たちは人間として自らが身に付けなければならない極めて大切な基本的生き方を、ほぼ学習してしまうことが出来るからです。これを少し別な表現でコメントするならば、彼らが一人の人間として生きて行くために不可欠な、何をどのようにしたらよいのかと言うことに気付く基本的感覚、もしくはそれを見極めるために必要な最小限の基本的感性を、この時期に培うことが出来るのです。ですからこの大切な時期を親たちはよくよく留意して、しっかりと子育てに当たらなければならないのです。決して手遅れしてはならないのです。まさしく「三つ子の魂、百まで」と言われるように、この三歳までの培いがその子の一生を左右することになるからです。何と大切な時期なのでしょう。
<p②そこでまず初めに満三歳を目安として、どうか満三歳位までは、徹底的に「アガペーによる全面受容」に勤めて下さい。それは既に学んだように「ウルトラ良い子」の生来の感性に即した受容、すなわちその感性に即した優しく寄り添う育児を心掛けて頂きたいと言うことです。そうすることによってこの子たちが充分自らが愛され尊ばれている存在であることを、心の深みとその体感をもって存分に認識し得るからです。その時、彼らは生涯自己の尊厳を喪失することのない一人格として成長して行くことが出来るのです。よしんばその後にどんな困難な人生を歩むことがあったとしても、「三つ子の魂100までも」との諺(ことわざ)の通り、三歳までの極めて大切な人格形成の初時期に、その子の心と魂、そして体の芯にまで届くような「アガペーの全面受容」をもって愛され大切にされたその原体験は、必ず如何なる試練・逆境に遭遇しようとも、その子の自尊心(自らを『尊し』と思う心)を守り、支えてくれるのです。つまりこの貴重な原体験が、かかる場面でその子の心の深い所に自らが如何に大切な存在であって、このような試練や逆境のゆえに自暴自棄(じぼうじき)になって自己の尊い人生を台無しにしてはならないと、自ら自覚し忍耐する復元力を約束してくれるからです。ですから、胎児のときの「アガぺーによる全面受容」と共に、誕生してからのこの最初の時期に、徹底してこの原体験を与えて上げることが大切なのです。
③さて、次に申し上げたいことは、この場合「ウルトラ良い子の生来の感性に優しく寄り添いながら」と先に申し上げましたが、その意味をもう少し具体的に説明しておきましょう。言えば、彼らの特質である「八つの志向性」をよくよく受容し、それを引き出し、充足させる育児を心掛けると言うことです。その「八つの志向性」とは,「純粋志向性」、「本質志向性」、「霊的志向性」、「絶対価値志向性」、「独創的志向性」、「非打算的献身志向性」、「他者受容志向性」、「生命畏敬志向性」と言う八つの志向性のことでした。思い出して頂けましたか。これらについては既に本書の初め頃に詳述しましたので、そこを参照してみて下さい。ですから要するにこれらの志向性を良く理解し、それを満たして行くのです。決してそれに反したり、それらを否定したりして抑圧してはならないのです。そうすることなくそれらの特性をいよいよ引き出し、伸ばし、育て養い、彼らがその特性の持ち主であることを大いにエンジョイさせてあげるのです。そしてその特性のゆえに彼らの存在することの意義と尊さを存分謳歌(おうか)させてあげるのです。このことのゆえに彼らが自慢したり、自らを誇ったり、傲慢になることを心配したり、恐れたりする必要は全くありません。このような過ちや失敗に陥るのは全く別の事情、異なった配慮と訓練の欠如によるのです。この点についてはこのすぐ後で申し上げることに致しましょう。そこでまず何よりも大事なことは、彼らがこの時期に充分「アガペーによる全面受容」によって徹底的に愛され、受容されることによって自己の尊厳と自らの存在することの意義と価値を、彼らの意識と感覚の中に埋め込んでもらうことが重要なのです。このことにさえ成功するならば、すでに前項でも記したようにその先に如何なる試練や逆境が待ち受けていても、彼らはそれを克服できる潜在能力を有することが出来るのだと言っても、過言ではありません。この点についてよくよく心に留めておいて頂きたいものです。(続く)
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峯野龍弘(みねの・たつひろ)
1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。
この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。
主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。