永遠の命
N. K.
幼少時の高熱が原因で聴力を失ったN。「永遠の命」とは何か、求め、それを得た、ある男性のストーリー。
私は三人兄弟の末っ子として生まれました。5歳の時、高熱が原因で聴力を失いました。入院先で熱は下がったのに呼びかけても返事をしないことに母が気付いたのです。すぐ上の兄もろう者だったため、耳の聴こえない息子を二人育てることの大変さに、母は、私と兄の二人を養護施設に預けることにしました。兄はその後、事故で亡くなり、私は13歳まで施設で過ごすことになりました。施設にいる間、盲腸をこじらせて入退院を二年ほど繰り返したため、最終的にはその施設を出て、親元に戻ることになりました。ろう学校の中等部に入ったのは、人より遅い15歳の時でした。入った時は、ろう者が沢山いることに驚き、皆の使う手話が分からず一年ほど苦労しました。
キリスト教と初めて出会ったのは、ろう学校の専門学校に入った時です。昼休みに皆と離れて聖書を開いているクラスメートに興味を持って近づいたのがきっかけでした。聖書には神様のことが書いてあると言われ、自分も神様を知りたいと思い、誘われるまま3度ほど、教会へ行ってみました。そんなある日、聖書の中のヘブライ書というところに、人は死んだ後、裁きがあること、キリストを信じる人、信じない人では行く所が分かれることを話され、「あなたはどちらを決断する?」と問われ、私は返答することが出来きませんでした。そして、その時から私は教会に通う事を止めてしまいました。
社会に出てからは先輩に連れられ遊びに夢中になりました。世の中には、私が今まで知らなかった魅力が沢山あることを知りました。
初めて教会に行ってから17年目のある日、教会に通い始める2度目の機会が与えられました。それは、アメリカ手話サークル主催のキリスト教の講演会でした。アメリカ手話に興味があった私は、その講演会に参加することにしました。
講演の内容は「永遠の命」というものについてでした。講師の先生は、どんなに財産を積んでも天国には入れないこと、また言葉の内には命があること、聖書には命の言葉が書いてあることなど、「永遠の命」について私たちに分かり易く語ってくださいました。私は、その講師の先生が話すキリストのことをもっと知りたいとその時思いました。そして、講演の最後に「信じたい人は居ませんか?」という問いかけへの応答として、私はその場に立ち上がりました。
その後、ろう教会を紹介されました。当時、心に強い飢え渇きをもっていた私は、すぐに聖書を読み始め、教会にも熱心に通うようになりました。私があまりにも毎週休まずに通い始めたため、親は心配して通うことに反対しましたが、元旦にも教会へ行く私を見て、次第に何も言わなくなりました。
教会に通うにつれ、初めは理解できなかった聖書の内容も徐々に解るようになりました。心の内にある自分の"罪"というものを山のように気付かされました。友人と喧嘩したり、人とぶつかったりしたことなど、私は自分が犯してしまったと思う罪を次々と告白し、その罪の赦しをいただきました(神様は、私たちが、ごめんなさいと一度悔い改めると、私たちを赦してくださいます)。罪を告白する度、私の中の古いものは過ぎ去り、心には喜びが増していきました。
洗礼を受けたのは40歳、イースターの時です。その時心に深く響いた聖書の言葉を今でもはっきり覚えています。
「過去のあなたは小さなものであったが、
未来のあなたは非常に大きくなるであろう」
ヨブ記8章7節
その聖書の言葉は、小さく価値の無かった私を、神様が豊かに、大きく成長させてくださると約束してくださったようでした。イエス様を信じてから、私の心の虚しさは消え、苛立ちや葛藤もなくなりました。子供の頃、長い間親から離れ寂しかった思いや、いじめられて辛かったことも、みな過去のものとして消え去っていきました。神様が日々私の心に働きかけ、どうすればよいか教えてくれるので、人ともぶつからなくなりました。今では、毎日心に平安があり、神様の言葉が私を満たしてくださるので、本当に感謝しています。
洗礼を受けて数か月後のある日、不思議な夢のようなものを見ました。半分、目覚めていたのかもしれません。いきなり目の前が真っ白になって、どこを見ても真っ白で、そこはまるでダイヤのように綺麗な光が上から差し込んでいました。何だろうと考えていると、その光の先が将来私の行く所だと思わされました。夢のようなその幻はその後も見ましたが、そこが天国であり、最終的に私が行く所だと、私は確信しました。
今の仕事を退職した後、将来的には、妻を連れて色んな国へ行ったり、インターネットを通じて、世界中のろう者クリスチャン達とその国の文化や天国について語りあいたいという夢を持っています。そのことを想像するだけで、私はワクワクします。永遠の命を得ることを通して、私に人生の希望と生きる喜びを与えてくれた神様に心から感謝しています。ハレルヤ!