安らかに心豊かな人生を過ごすための道しるべ「主と共に、主イエスに倣って」(22)

峯野龍弘牧師

第5章 主イエスの歩まれたアガペーの生涯の日々

Ⅴ. 十字架上ですべての罪人の罪を担われ、贖(あがない)となられた主イエス(続き)

■「ただ信じること」の奥義(前回に続く)

その理由は、以下の通りです。

第一に、この信じ難い出来事については、この出来事が起こる遥か以前から、既に旧約聖書の中に明言され、預言されていたからです。預言者イザヤは、主イエス・キリストの母マリヤの処女降誕やその誕生の次第を、早くもその時より700年以上も前に、既にこう予言していました。「見よ、おとめが身ごもって、男の子を産み、その名をインマヌエルと呼ぶ」(イザヤ7:14)、「ひとりのみどりごがわたしたちのために生まれた。ひとりの男の子がわたしたちに与えられた。権威が彼の肩にある。その名は、『驚くべき指導者、力ある神、永遠の父、平和の君』と唱えられる」(同9:5)と。

第二に、母マリヤが身ごもった時、婚約中であったのにマリヤが妊娠したことを知った婚約者のヨセフは、驚き悲しんで婚約を破棄しようとしました。なぜなら、ヨセフは神を畏れる敬虔な正しい人物であったので、婚約中に一度も過ちを犯していませんでした。それなのにマリヤが身ごもったのですから、彼女がヨセフを裏切って他の男性との間で妊娠したのだと判断したからです。ところがある夜、天使が夢の中に現れ「『ダビデの子ヨセフ、恐れず妻マリヤを迎え入れなさい。マリヤの胎の子は聖霊によって宿ったのである。マリヤは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからである。』このすべてのことが起こったのは、主が預言者を通して言われていたことが実現するためであった。『見よ、おとめが身ごもって男の子を産む。その名はインマヌエルと呼ばれる。』この名は、『神は我々と共におられる』と言う意味である。」(マタイ1:20~23)と言われたのでした。これこそイザヤの預言の成就そのものでした。

しかし、ヨセフばかりではありませんでした。マリヤも同様に天使の御告げを明白に聞いたのでした。天使は、マリヤにこう告げました。「マリヤ、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。その子は偉大な人になり、いと高き方の子と言われる。」(ルカ1:30~32)と。何と厳(おごそ)かなことでしょう。

第三に、この人間の力では断じて起こり得ず、また人間の理性では絶対に信じ難い驚くべき出来事が、人類の歴史の中でただ一度だけ起こったのでした。実にこれこそ偉大な神の存在と、神が天地万物をも創造され、人間をもお造りなった全能者にして創造主であることの証明でもありました。人間を無から創造することのお出来になった全能なる神であればこそ、ただ一人の例外として、処女マリヤの体内に「神の御子」を、身ごもらせることも可能だったのです。ですから「マリヤの処女降誕の奇跡」は、唯一の大いなる全能者にして創造者である神の存在を証明する、「神の存在証明」であると言えましょう。

そこでマリヤ自身がその時、この驚くばかりの神の御計画と御業を信じることが出来ず、天使にこう質問したのでした。「どうして、そのようなことがありえましょうか。わたしは男の人を知りませんのに。」(ルカ1:34)と。すると天使がこう答えました。「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる。・・・神にできないことは何一つない。」(同1:35~37)と。この時、マリヤの疑問は全く解け、彼女は全き服従と聖き献身の心をもって、明解にこう応答したのでした。「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」(同1:38)と。

そして「聖霊」とは、まさに「全能者であり、創造者である神の聖なる霊と力と命」であり、この「聖霊」によって、母マリヤは身ごもり、「神の御子、主イエス」がこの世に誕生されたのでした。マリヤがこのように全く人間同士の関係によらず、ただ大いなる聖き神の御力、つまり「聖霊によって」身ごもったことは、何と「罪も汚れもない聖き神の御子」の誕生にふさわしい「聖なる出来事」であったことではありませんか。これこそお互い人間がこの世にあって「信じ、受け入れるべき最大の奥義」なのです。あなたは、これを信じ、受け入れるでしょうか!(続く)

峯野龍弘(みねの・たつひろ)

1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。

この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。

主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。