愛による全面受容と心の癒しへの道(106)

峯野龍弘牧師

第7章 「ウルトラ良い子」を健全に育てるための「アガペー育児法」

Ⅲ、第2期 3歳から6歳までの幼児期後半の幼児教育(前回からの続き)

A.人間関係における調和の精神と感性の育成(前回からの続き)
2 如何にして愛することの大切さを教えたらよいのか。

ⅳ.他者と良く交わり、仲良く過ごすことが出来る人に育てよ。

ウルトラ良い子系の子供たちで、今日かなり多くの子供たちが他の子供たちと良く交われなくなり、一人孤立したり、不登園・不登校になったりすることがあります。それは既に何度も申し上げて来たように、その子たちの生まれながらの純粋感性と世俗的価値観にとっぷり浸りながら育ってきた普通の子供たちとの物事に対する考え方や価値観の大きな相違から来る感性 の違いや違和感によるものであるのですが、だからこそ親はこの相違や違和感を越えて他者と良く交わったり、仲良くすることによくよく留意しながら子育てをして行かなければならないのです。そうでないとますます孤立化が加速し、社会性が身につかず、対人関係不全症候群を引き起こし、心病む子供になってしまう危険があります。

ではどうしたら他者と良く交わり、仲良く過ごせるようになるのでしょうか。以下にその方法について一つのヒントを差し上げましょう。

それはわが家にお友達を迎え、そこに親自らいつも共にいて見守るのです。ウルトラ良い子たちはそこに親が共にいることのゆえに安心感を抱き、よく交わり、よく遊ぶことが出来ます。のみならず、そこで感性の違いから違和感やトラブルが生じたら、直ちに子供たちに手を差し伸べて純粋感性を持った我が子の意見と他の子供たちとの意見の違いを汲み取って、両方の考え方の調和を「真理に従って」調整してあげるのです。ここで重要なことは「真理に従って」と言うことです。こうする時、ウルトラ良い子である我が子は納得し、世俗的価値観の下で育てられてきた子供たちも「真理に従った」より優った考え方を学習し、彼らの人生に大きく貢献することが出来るのです。小僕は、これを「仲良し家庭塾」と呼んでいます。

かくすることによってウルトラ良い子は、知らずして自らの考えていることに自信を持つようになり、他の子供たちもこの子を受け入れるばかりか、より良い考え方を身に付けることとなり、更に楽しく交わり、仲良しになって、その延長線上で学校生活を送ることが出来るようになります。その結果、日々の学校生活がより楽しいものとなり、そこにはもはや不登園・不登校が起こりません。

ここで以前にも若干紹介しましたが、一つの典型的な成功例を紹介しておきましょう。

ある時、学校でウルトラ良い子であるA君が、クラスの中で複数の同級生たちから陰湿ないじめに遭うようになりました。学校の先生たちも非常に心配し、いじめる子供たちを呼んでよくよく話をし、再びいじめないように注意しました。その後しばらくはいじめが治まりましたが、しかし残念なことには再びいじめが始まりました。ところがA君の家庭は、敬虔なクリスチャン家庭でした。そこで両親は心を合わせて主に祈り、その良き解決の道を祈り求めました。その結果、両親の思いの内に一つの道が示されました。それはいじめる子供たちを毎日学校の帰りにA君の家庭に招き、美味しいおやつを用意し、二人の男女の大学生にもボランティア協力をしてもらい、楽しく交わり遊ぶことにしたのでした。初めは相互に緊張していましたが、叱られると思っていたのに優遇され、またボランティアのお兄さん、お姉さんの巧みなリードの下で、楽しいひと時を過ごすことができるようになりました。その内に更にそこには彼ら以外の子供たちまでが数名参加するようになり、一ヶ月もしない内に彼らは非常に仲良しになり、クラス全体がまとまりのある優良クラスに変わりました。勿論のことA君も不登校にならずに済みました。こうすることによって見事に不登校に陥りそうになっていたA君を救済することが出来たばかりか、何よりもいじめる子供たちを善導することに成功し、双方に仲良くすることの幸いと喜びを学習させることが出来たのでした。何という幸いなことでしょう。解決の道は、意外なところにあるものですね。

かくしてこの時期の子供たちに、是非とも他者と良く交わり、仲良く過ごすことが出来るよう、様々な機会を捉えてよくよく教え示して行こうではありませんか。(続く)

峯野龍弘(みねの・たつひろ)

1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。

この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。

主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。