愛による全面受容と心の癒しへの道(19)

峯野龍弘牧師

第3章 ウルトラ良い子の抑圧の最大要因

I. 世俗的価値観

B. 世俗的価値観を構成する恐るべき諸要素
2). 能率主義、効率主義

さて、次に取り上げる世俗的価値観を構成する恐るべき第二の要素は、いわゆる能率主義、効率主義です。

そもそもウルトラ良い子にとって重要なことは、その事柄が純粋か、真実か、あるいは本質的か、理想的か、更には自らの内に閃いた独創的な関心事に合致し、その求めるところを充足しているかどうかなのです。その上彼らは、その目的を達成するための真摯な姿勢や純なる動機を重視し、またその目的達成までのプロセスが如何に納得のゆくものであったかどうかを大切にします。

ですから、彼らはその事柄を極め目的を達成するためには、時間の長短や労苦の多寡を少しも気にしません。彼らは如何に他者から非能率的、非効率的と思われようと、そんなことは一向にお構いなく、ただひたすら当該の事柄の実現に没頭いたします。そこで途端に他者から批難を浴びる結果となります。挙句の果てには、「のろま」、「うすのろ」、「手際の悪い奴」などと、どぎつい指摘を受けるまでに至るのです。

悲しいかな、こうなるとますますウルトラ良い子たちの自尊心は傷つけられ、いよいよそのトラウマが増します。のみならず、この世の能率主義者や効率主義者と彼らとの間の溝は、哀れなるかな、止めどもなく深まるばかりです。その結果、ウルトラ良い子たちは遂に世を忌み嫌い、世間とますます遊離し、人間関係が極めて希薄となってしまいます。それどころか、にもかかわらずあえて彼らに干渉して能率、効率を要求する者があるならば、遂に彼らは発狂せんばかりに狂い叫んだり、物を壊したり、相手に攻撃をしかけたりなどして、異常心理・異常行動を取るようにまで至るのです。

こうしたことは皆、能率主義、効率主義に根っから馴染まないウルトラ良い子の感性、特性を理解せず、それを無視し、更には逆なでする人たちによって引き起こされた恐るべき弊害です。ですからお互いは、日頃からこの点によくよく注意する必要があるわけです。(続く)

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 峯野龍弘(みねの・たつひろ)

 1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。

 この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。

 主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。